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     「現代能楽集」の連作は、能の本質的な構造を根底から捉え返し、それを現代に開き、活かしていくために、岡本章によって1989年より開始され、現在まで多様な角度から持続的に16作の連作が試みられている。その取り組みの問題意識として、次の三点があげられる。一つ目は、言語、テキストレヴェルだけでなく、能の演技や身体性に注目し、対象化の作業を行うこと。二つ目は、そのため実際に能・狂言の演者の参加を得、共同作業を行い、その本質的な構造を浮き彫りにし、同時にその作業が「現在」に根差した新鮮な表現として息づくよう模索すること。そして三つ目は、能・狂言以外の多様な芸術ジャンルの表現者との共同作業を行い、絶えず各ジャンルの根底のゼロ地点に戻って、縮小再生産ではない、新たな「開かれた」表現の、関係性の場を目指すこと。

     この根源的な捉え返しの共同作業は、シリーズの中でも、能・狂言と多様な現代芸術ジャンルとの間で行うケースと、能・狂言の演者だけで行うケースがある。「現代能楽集」の連作の成果は、『「現代能楽集」の挑戦 錬肉工房1971-2017』(論創社)に纏められている。

    「現代能楽集」の連作一覧

    1.『AYAKO SEKIGUCHIのための「姨捨」』―フェデリーコ・モンポウ「沈黙の音楽」を中心に

    シンポジウム『〈ことば〉のいのち、〈からだ〉の声―能のコスモロジーと身体性』

    (出席・大野一雄、観世銕之亟、高橋康也、那珂太郎、渡邊守章、岡本章)

    1989年11月 銕仙会能楽研修所

     

    2.『水の声』―能『鷹姫』によるヴァリアント

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    1990年 9月 錬肉工房アトリエ

    1990年11月 銕仙会能楽研修所

    1991年 6月 青山円形劇場、梅若能楽学院会館

     

    3.『井筒・AM BRUNNENRAND』

    1992年12月 錬肉工房アトリエ

     

    4.『〈春と修羅〉への序章』

    1993年 3月 錬肉工房アトリエ

     

    5.現代能『紫上』

    1997年10月 新津市美術館

    1998年 3月 国立能楽堂

     

    6.現代能『無』

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     1998年 6月 シアターコクーン

     

    7.『ハムレットマシーン』

     

    1998年10月 世田谷パブリックシアター

    2003年11月 麻布die pratze

     

    8.現代能『ベルナルダ・アルバの家』

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      2002年 2月 テアトルフォンテ

           3月 横浜能楽堂

      2008年 9月 錬肉工房アトリエ

     

    9.現代能『始皇帝』―テキスト・リーディングの試み

      2003年12月 国立能楽堂

     

    10.『バッカイ』

      2010年 2月 赤坂RED/THEATER

     

    11.現代能『春と修羅』

      2012年 3月 赤坂RED/THEATER

      2018年 3月 d-倉庫

     

    12.『オイディプス』

      2013年3月 上野ストアハウス

      2015年3月 座・高円寺2

     

    13.現代能『始皇帝』

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    2014年3月 国立能楽堂

     

    14.『西埠頭/鵺』

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    2017年3月 上野ストアハウス

     

    15.『盲人達』

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       2021年6月 KAAT神奈川芸術劇場中スタジオ

     

    16. 『ハムレットマシーン2023』

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       2023年10月 上野ストアハウス